2010.12.08 Wednesday
少女漫画と冬のソナタ
ユン監督「人間は運命というものに強い力を感じます。神がそう創ったのでしょう。”愛”という素材を扱うから飽きずに(ドラマ制作を)続けられます。」
Q:今の若者たちに、ユン監督や僕が知る“恋”を伝えるのは難しい。だって、今の時代はネット社会になってしまって"愛"に関する情報がテレビや本などからあふれています。だから共感したり語り合うのは難しい。でも、そういう若い人々にも「冬のソナタ」は人気です。」
ユン監督「時代が変わっても、真実の恋は変わらない気がします。純粋叙情と言うんでしょうかね。昔の少女漫画にありそうな感性かもしれませんが、いくらネット社会でも真実の愛は不変だと思います」
Q:いくら時代が変わっても娯楽があふれてもですか?
ユン監督「韓国の古典である黄順元の”夕立”のような小説は、今の青少年からも愛されて、いくら時代が変わってもその感動は変わりません。それと同じではないでしょうか。時代は変わっても純愛は描かれ続ける。最近、即席の愛だの愛の変化だの言いますが、純愛への乾き、欲求は常にあります。だから余計古典や永遠なもの、純粋なものを恋しく思い求めるのだと思います。こんな時代に幼稚だと言われるでしょうが、意外と人は純粋なんだと思います。古典を読んで、今も感動する人が多いということは、いいことだし生きる力になりますね。」
Q:今、パソコンの前にいる人、ゲームをしている人、いろいろいるでしょう。でも純粋な恋に関しては、黄順元の”夕立”のような、アルフォンス・ドーテの”星”のような純愛は、変わりません。それが真理だ、と」
ユン監督「(人々が)求めるものだと思います。」
Q:「それが真理だから追い求めるのでしょう。人々は純粋を求めたがる。そういう結論を出せました。皆さんもたくさん恋をしてください。特に初恋の大切さを心に深く刻み、みんな一緒にユン監督に拍手を送りながら、終わりにしましょう」
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さすがユン監督です。インタビュアーの人もすばらしかった。お二人とも「昔の少女漫画の感性」をご存じのようです。『キャンディキャンディ』などをさしていってるのでしょうか。
ともあれ、私は、「純粋叙情」には年齢も国境も性別も職業の貴賤も関係ない、恋において、人はほんとうに自由だから、とくに初恋は……という、まさに「昔の少女漫画」のテーマを再認識。
だから、「少女漫画」は軽く国境を越えていった。あり得ない、幼稚だ、といわれようが(それは私が冬ソナを見て最初に思ったことですが)、「人間とは意外に純粋なのだと思います」というユン監督の言葉は、深く胸に響く。「冬のソナタ」の成功の核心を見た気がした。
純粋な恋が、ほんとは、人がこの世に生まれてくる、最初の芽だったりするのだから、まさに世界創造の不思議現場ともいえるだろう。
そうか、少女漫画の魅力とは、そういうことだったのか、と。人が生まれる原初の不思議現象の些細な現場描写だったのか! と。だから、少女漫画には真理がある。言葉にするとたいしたことないけど、真理とは、簡単なことなんだろう。
というようなことを、冬ソナを見直し、ユン監督のインタビューをみつつ、思ったわけですが、最後、今回の2010年日本での冬ソナ完全版DVD発売に関してのユン・ソクホ監督のインタビューもあって、それは、2002年当時と内容的にはあまり変わらないものの、より、ソフィスティケイトされた言葉で話しているので、それも、ついでに、抜粋いたします。
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「私のドラマの方向性はカタルシスを与えることです。ドラマを見た人の心がきれいになるように作っています。感情の純化を感じられるドラマを作りたいと常に思っています。」
Q:女性心理に詳しいですが、どのように研究されているのですか。
「してないですよ。私の性格の中に女性らしさがあるからだと思います。」
Q:冬ソナの魅力は?
「初恋のときめきや甘酸っぱさをうまく表現したと言われています。そこには誰もが求める純粋さと美しさという永遠の美徳があり、ドラマを見た方がそれを感じてくれたのでしょう。純粋さと美しさは誰もが求めるものですからね。このふたつの美徳のおかげで「冬のソナタ」は皆様に永く愛されたと思います。」
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つるべそっくりの笑顔のユン監督、ほんとすんばらしいです!